一時金?年金?併用?退職金にかかる税金の違いについて学ぼう!

2019.07.01 (更新日:2019.07.01)
確定拠出年金の加入拡大に伴い、これまで退職金制度を導入していなかった企業でも退職金制度を導入するケースが増えてきています。老後の生活を支える大切な退職金ですが、受取り方を選べることや受取り方によって税金が異なるのはご存知でしょうか?今回は、ファイナンシャルプランナーの坂本卓也(所属:ブロードマインド株式会社)が退職金の受取り方と税金の違いについて解説いたします。
■退職金にはどんな受取り方があるの?
企業の退職金には、企業が運用する確定給付年金(DB)や、ご自身で運用する確定拠出年金(DC)など、さまざまな退職金制度があります。他にも企業年金基金で運用しているところや、保険商品などを利用して運用しているところもありますが、今回はDB、DCの例で見ていきます。基本的に退職金は、退職時に一括で受取ることが一般的ですが、DB、DCでは年金受取り、もしくは一時金と年金の併用での受取りも可能です。
■一時金で受取る場合にかかる税金
退職金を退職時に一時金で受取ると、退職所得扱いとしての課税対象となります。以下が退職所得の計算式となります。
退職所得=(収入金額 - 退職所得控除) × 1/2
退職金は一度に何百万、何千万と大きな収入を得ることになりますが、「退職所得控除」があるため、課税対象額はそれほど大きくありません。場合によっては、非課税で受取れることもあります。「退職所得控除」の計算式は、下記の通りです。
勤続40年と勤続10年の場合を例にして考えてみましょう。
①勤続40年で退職金が2,000万円だった場合
退職所得控除  800万円+70万円×(40年-20年)= 2,200万円
退職所得   (2,000万円-2,200万円)×1/2=-100万円

退職所得控除の方が退職金額よりも大きいため、全額非課税で受け取ることができます。
②勤続10年で退職金が500万円だった場合
退職所得控除  40万円×10年=400万円
退職所得   (500万円-400万円)×1/2=50万円
したがって、退職所得の金額である50万円に対して、源泉分離課税で課税されることになります。
■年金で受取る場合にかかる税金
退職金を一括受取りでなく年金で受取った場合、受取り期間中も運用をすることができるため、受取り額を増やすことができます。
例えば、2,000万円を2%で運用しながら10年間年金形式で受け取ると、総額約2,200万円となります。DBでは昔ほど運用効果は高くないですが、仮に0.5%の運用の場合約2,050万円の受取りとなります。運用効果も踏まえると、一時金よりも年金で受取った方がより多くの金額を受取れます。
しかし、年金受取りの場合は退職所得ではなく、「雑所得」として課税対象となります。退職金を年金で受取ると、「公的年金控除」を利用することができますが、公的年金と一緒に受取ると、公的年金控除を超えて受取ることになるため、課税される可能性が高いでしょう。それでは、年金で受け取った場合の税金を計算してみたいと思います。
2,000万円を0.5%の運用で17.1万円ずつ60歳から10年間取り崩す場合、60歳~65歳の間は無年金(男性は昭和36年生まれ以前、女性は昭和41年生まれ以前は報酬比例部分は受取れます)のため、退職金の取り崩しのみで年収は17.1万円×12か月=205万円です。
公的年金等の収入金額が130万円超410万円未満のため、このときの雑所得の計算式は収入金額×0.75-37.5万円となります。(参照:高齢者と税(年金と税)/国税庁)これを当てはめると、雑所得が 205万円×0.75-37.5万円=116.25万円となります。65歳以降は公的年金も発生するため、所得はさらに上がります。
こうして計算された所得から、基礎控除や社会保険料控除を引いて課税所得を計算し、所得税・住民税が徴収されて実際の受取り金額が決まるのです。退職金を一時金受取でなく年金受取にすることで運用効果の分はプラスとなりますが、その分、医療保険や介護保険などの社会保険料の負担が上がってしまうことも…。
社会保険料・税金が引かれる分、実際に手元に入る金額は下がる可能性があるということです。当然、受取り期間中の運用効果が高ければ、税金・社会保険料を支払ったとしても、一時金で受取るよりも年金で受取った方が総受取り額が増えるということもあり、慎重に判断する必要があります。
■一時金と年金の併用で受け取る場合の税金
一時金と年金の併用で受け取った場合は一時金部分は退職所得として、年金部分は雑所得としてそれぞれ課税対象となります。
例えば勤続40年で2,000万円の退職金を、1,000万円は一時金で受け取り、残りの1,000万円は年金で受け取るケースを見ていきましょう。上記の計算式に一時金で受け取る1,000万円を当てはめると、下記となります。
退職所得控除  800万円+70万円×(40年-20年)= 2,200万円
退職所得   (1,000万円-2,200万円)×1/2=-600万円
よって一時金で受け取る部分は全額非課税で受け取れることになります。一方、年金で1,000万円を0.5%の運用で10年間取り崩すと、8.5万円/月ずつの受け取りとなり、他の収入がなければ年収は102万円となります。
公的年金等の収入金額が70万円超130万円未満の場合、雑所得は収入金額-70万円となります。これを当てはめると、雑所得102万円-70万円=32万円となります。(参照:高齢者と税(年金と税)/国税庁) 
いかがでしたでしょうか?退職金の受取り方は目的によっても選び方は変わりますが、単に受取り金額だけを見るのでなく、税金・社会保険料の負担も考えて受け取り方を選ぶとよいですね。
ブロードマインド株式会社
執筆者:坂本 卓也
新婚世帯や子育て世帯へ向けたマネーセミナー講師として活動。社会保障や金融商品、ニュースでよく聞く言葉など、皆さまの疑問を解決し、生活に役立てていただけるような情報を発信します。

■保有資格
・TLC(生命保険協会認定FP)
・2級FP技能士

■得意分野
資産運用、ライフプラン、保険全般、住宅ローン

■実績
マネーセミナー:年間50回以上開催