わが家は任意後見と家族信託どちらがおすすめ?ケース別にみてみよう

2018.12.14
認知症などで意思判断能力がなくなってしまった場合、その方の財産は凍結されてしまうことをご存知でしょうか?ご本人にとってもご家族にとっても、凍結された財産というのは財産としての意味をなしません。そこで近年、認知症患者の財産管理対策として注目を浴びつつあるのが「成年後見制度(法定後見・任意後見)」と「家族信託」です。今回はファイナンシャルプランナーの平原直樹(所属:ブロードマインド株式会社)が、認知症発症前に利用することのできる「任意後見制度」と「家族信託」のどちらがおすすめなのか?をケース別にみていきたいと思います。
■「任意後見制度」と「家族信託」についておさらい
任意後見制度と家族信託のどちらが有効なのか?をみていく前に、まずはそれぞれについて簡単におさらいしたいと思います。
【任意後見とは?】
任意後見制度は、認知症を発症する前の意思判断能力がしっかりしているうちに利用できる制度のことで、財産管理を託す人=被後見人、託される人=後見人、後見人をチェックする人=任意後見監督人といいます。後見人の主な目的は「財産管理」と「身上監護」になりますが、成年後見制度の一つであるため、あくまでも“財産を減らさない”という意味での財産管理であることが大きな特徴といえます。そのため、後見人の選定や後見人への報酬などは比較的自由に設定することができますが、後見内容に関しては目的に沿った内容である必要があります。また、後見人が正しく後見活動を行っているか?をチェックしてくれる、任意後見監督人を家庭裁判所に選出してもらう必要があります。
【家族信託とは?】
家族信託は、いざ認知症を発症した場合に備えて、あらかじめ信頼できる家族に財産を託し、認知症発症後に財産の管理や処分を任せる制度のことです。財産管理を託す人=委託者、託される人=受託者、受託者が管理することで利益を受け取る人=受益者といい、委託者=受益者になることが一般的です。任意後見とは異なり、信託財産(=管理・処分を任せる財産)をはじめ、信託内容に関する制限は基本的にはありません。また、受託者は委託者に代わって、信託財産であれば実家の売却や預金の引き出しなどを行うことができたり、信託内容に相続時の取り決めを盛り込むことで遺言としての機能を果たしてくれるといった特徴もあります。
【併用はできる?】
さて、どちらも認知症を発症した場合に備えて、意思判断能力のあるうちに利用することのできる制度ですが、そもそも「任意後見制度」と「家族信託」を併用することはできないのでしょうか?
じつは、どちらか一方を選択しないといけないわけではありません。つまり、2つの制度を併用することもできるというわけです。とはいえ、あくまでも「被後見人の財産を減らさない」点に主眼が置かれた任意後見制度と、委託者と受託者との契約行為である家族信託とでは強みが異なります。そのため、ご家庭ごとの状況によって、わが家の場合はどうするべきか?を検討してみることをおすすめします。
次では、数ある場面の中から4つのケースをピックアップして、それぞれの場合について「任意後見」と「家族信託」のどちらがおすすめなのか?を解説いたします。
■ケース1:収益不動産を所有している場合
まずは、収益不動産を所有しているケースです。何の対策も行っていなかった場合、認知症を発症するとあらゆる財産が凍結されてしまうため、当然ですが残された収益不動産の管理も売却もできません。そのため、「家族信託」または「任意後見+管理委託契約」のいずれかの対策を行う必要があります。ただし「任意後見+管理委託契約」の場合は、管理委託契約の内容にもよりますが、収益不動産の管理はできても売却までは難しいかもしれません。
また、死亡後の相続対策まで行いたい場合は「家族信託」の活用がおすすめです。というのも、たとえば複数のお子さまがいらっしゃる場合などは、相続時に誰が不動産を相続するのか?という問題が生じますよね。相続不動産そのものを共有することも可能ですが、建て替えや売却時には全員の同意が必要となり、後々の争族となりかねません。一方、家族信託を活用すると、管理権限は一人に集約させて、家賃収入を得る受益権を共有するという仕組みを取ることで争族を回避することができるというわけですね。
■ケース2:お子さまが一人っ子かつ相続財産が現金と自宅の場合
お子さまが一人っ子で争族になることも想定されず、かつ相続財産が現金と自宅しかない場合を考えてみましょう。金融資産の財産額にもよりますが、管理を引き継ぐべき不動産などもないので、家族信託の必要性はあまりないといえます。よって、親が意思判断能力に欠けた場合に病院や介護施設などの入所手続きができるよう、一人っ子のお子さまとは任意後見契約を結んでおくと安心ですね。
■ケース3:障がいのあるお子さまがいる場合
障がいのあるお子さまがいる場合、その子の経済的な支援はとても重要なテーマといえます。もちろん親自身が元気なうちは問題ありませんが、ご自身が衰えた場合や死後に関しては誰かに頼んでおく必要があります。このようなケースにおいては、「家族信託」または「任意後見+遺言」という選択肢がありますが、ここでも「家族信託」が役に立ちそうです。
というのも「任意後見+遺言」の場合、他にもお子さまがいる場合はその子や親族に障がいのある子のフォローを依頼することはできますが、遺言は自分の死後にしか効果がありません。そのため、たとえば夫→妻、妻→障がいのある子へと財産が移る場合、ご夫婦それぞれが遺言を書いておく必要があるというわけです。一方「家族信託の場合」は、受益者連続型信託という形で、「夫の死後は妻へ、妻の死後は障がいのある子へ」といった代替わりの遺言機能を持たすことが可能です。こうしたことから、受益者を障がいのある子とした家族信託を作成しておくと、ご夫婦の死後も財産を別の兄弟などに管理してもらいつつ、お子さまの暮らしに使っていくことが可能です。
■ケース4:独身またはご夫婦2人の場合
家族信託・任意後見ともに、お子さまに管理を任せるイメージがあるかと思いますが、必ずしもお子さまにお願いする必要はありません。たとえば、甥・姪といった頼れる親族に任せても良いですし、親友や弁護士・司法書士といった専門家など、家族以外の第三者に任せても大丈夫です。よって、お子さまがいないケースの場合、「家族信託のほうが良い」あるいは「任意後見のほうが良い」とは一概には言えません。お持ちの金融資産や考え方などで、採用するべき手段が変わってきます。
ここまで4つのケースについて考えてきましたが、最後にもう一つ。生前贈与を検討しているご家族の場合を考えてみたいと思います。相続対策=家族信託と思われがちですが、そもそも親の意思判断能力がしっかりしているのであれば少し話が違ってきます。というのも、家族信託と任意後見のどちらが良いのか?という議論とは関係なく、生前贈与であれば今から始めることが可能ですよね。そのため、家族信託か?任意後見か?を考える前に、生前贈与自体をどのように進めていくのか?を検討すると良いでしょう。
いかがでしたでしょうか?認知症の財産管理対策として挙げられる「任意後見制度」も「家族信託」もそれぞれに特徴がありますし、前述の通り併用することも可能です。また、家族構成や保有資産などによって必要な対策も変わってきますし、多くの場合は相続対策も併せて検討することになります。このように、考えるべきことがたくさんありますので、信託制度や後見制度に詳しい専門家(司法書士や弁護士、家族信託コーディネーターなど)をうまく活用することをおすすめいたします。
ブロードマインド株式会社
執筆者:平原 直樹
財産形成や退職金運用といったお金の殖やし方を多くの方に伝えるべく、日本全国で年間100件を超えるセミナーを開催。最近では、高齢者の財産管理手法として、家族信託を広めるべく活動中。

■保有資格
・IFA(証券外務員一種)
・TLC(生命保険協会認定FP)
・2級FP技能士
・家族信託コーディネーター
・旅行業務取扱主任者

■得意分野
資産運用、ライフプラン、保険全般、住宅ローン、相続、家族信託

■実績
マネーセミナー:年間100回以上開催
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