認知症を発症した人の財産を守る!「法定後見制度」ってどんな制度?

2018.11.05
老後に向けてしっかり資産形成ができていたとしても、認知症を発症した場合は保有している財産が凍結されてしまいます。その対策として「成年後見制度」という制度が注目を浴びています。これには、認知症を発症した方が利用する「法定後見制度」と、意思判断能力があるうちに将来の後見人を決めておく「任意後見制度」の2つがあります。今回は「法定後見制度」について、ファイナンシャルプランナーの平原直樹(所属:ブロードマインド株式会社)が解説いたします。
■法定後見制度とは?
法定後見制度とは、認知症を発症し、意思判断能力が低下した方が利用できる制度のことです。こちらの場合、基本的に家庭裁判所が後見人を選定します。子どもが立候補することも可能ですが、その際の判断も家庭裁判所が行うことになります。ちなみに、昨今の傾向としては、親族間のトラブルを避けるために、子どもも含めて親族は後見人として選出されないことが多いようです。
なお、法定後見制度には以下3つの区分が存在します。
「□ 自己の財産を管理・処分することができない(後見相当)」
であれば「後見」
「□ 自己の財産を管理・処分するには,常に援助が必要である(保佐相当)」
であれば「保佐」
「□ 自己の財産を管理・処分するには,援助が必要な場合がある(補助相当)」
であれば「補助」
(出典:成年後見制度についてよくある質問/裁判所ウェブサイト
法定後見制度を利用する際には、被後見人が「後見相当」・「保佐相当」・「補助相当」のどの区分に該当するのかを医師に診断してもらうことになります。
物忘れが増え、契約書などの理解が難しい状態が「補助」です。3区分の中で一番軽い状態と言えるでしょう。次に、日常の買い物くらいはできても、意思判断能力に衰えが目立つ状態を「保佐」と言います。そして、意思判断能力に最も欠ける状態を「後見」と言います。いわゆる意思判断能力に欠け、日常の買い物などもできない状態です。
■後見人を頼むといくらくらいかかるもの?
家庭裁判所から後見人が選出された後、後見をお願いしている期間中、被後見人は月額2~5万円程度(資産の総額による)の報酬を後見人に支払う必要があります。後見の期間が長期にわたる場合、馬鹿にならない費用と言えますね。
■法定後見制度の申請方法と流れとは
【1】申立の準備
準備には、大きく分けて2つの要素があります。
1つ目は、「被後見人の健康状態のチェック」です。後見が必要と感じるようになったら、被後見人が「後見相当」・「保佐相当」・「補助相当」のどれに該当するのかを医師に診断してもらい、診断書を取得する必要があります。
2つ目は、「申立人の候補者の選定」と「後見人の候補者の選定」です。実際に、家庭裁判所とやり取りをする申立人の負荷は小さくありません。家族内で誰が申立人になるのか?は事前に話し合っておくほうが良いかと思います。
原則、4親等内の親族しか申立人になることはできません。親や子が1親等、祖父母や孫、兄弟姉妹が2親等、ひ孫、叔父叔母、甥、姪が3親等です。その先になる4親等というと、いとこや甥や姪の子までが対象ということです。4親等までいくと普段は疎遠の親族となることも珍しくないので、親しい友人などに任せたいという方もいるかと思いますが、友人は申立人にはなれませんのでご注意ください。
4親等内の親族がいない方や疎遠により申立人になってもらえない場合など、市区町村によってはその自治体の長が申立人になることもあるようです。自治体によって取り組みへの温度感も違うため、被後見人が住む自治体の取り組みを調べてみると良いでしょう。
【2】申立
被後見人の住所地を管轄する「家庭裁判所」に申立を行います。その際に、被後見人の戸籍謄本や住民票が必要となります。そのため、申立人が遠方に住んでいる場合などは、書類の準備に手間がかかりますね。なお、申立時には収入印紙や切手といった費用が1万円程度発生し、原則申立人が支払うことになります。
【3】家庭裁判所で審理
申立内容を元に、家庭裁判所が審理に入ります。前述の通り、誰を後見人にするかは家庭裁判所の判断です。家族が指名されることもありますし、家族以外の弁護士や司法書士など専門家が指名されることもあります。
家庭裁判所は、後見人の不祥事防止の観点から、財産がある方ほど家族を後見人として認めない傾向にあるようです。また、家族が後見人となった場合、後見監督人という監視役を付けることが一般的です。なお、後見人の選定に対して不服申し立てをすることはできません。
【4】審判
審理の結果、後見人と必要であれば監督人を家庭裁判所が決定します。審判の内容は、法務局に登記されます。
【5】後見活動開始
後見人の役割である「財産管理」「身上監護」を中心に後見人の活動が始まります。後見人の活動は、被後見人が死亡するか意思判断能力が回復するまで終了しません。認知症が治るというのは考えにくいため、被後見人が死亡するまで後見の活動は続くと考えたほうが無難ですね。
いかがでしたでしょうか?選任に不服申し立てもできず、被後見人の死後まで後見業務が続くことを考えると、後見人との相性などはとても重要なポイントと言えそうですね。
ブロードマインド株式会社
執筆者:平原 直樹
財産形成や退職金運用といったお金の殖やし方を多くの方に伝えるべく、日本全国で年間100件を超えるセミナーを開催。最近では、高齢者の財産管理手法として、家族信託を広めるべく活動中。

■保有資格
・IFA(証券外務員一種)
・TLC(生命保険協会認定FP)
・2級FP技能士
・家族信託コーディネーター
・旅行業務取扱主任者

■得意分野
資産運用、ライフプラン、保険全般、住宅ローン、相続、家族信託

■実績
マネーセミナー:年間100回以上開催
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