認知症になったら自分の財産はどうなるの?

2018.11.02
意思判断能力が低下してしまう認知症。内閣府によると、2025年には65歳以上の約5人に1人が認知症になるという推計が出ています。つまり、自分自身やご家族など、誰にでも認知症になる可能性はあり得るというわけです。さて、認知症を発症した場合、老後に向けて貯蓄した預金や資産はどうなってしまうのか考えたことはありますか?今回は、ファイナンシャルプランナーで家族信託コーディネーターの平原直樹(所属:ブロードマインド株式会社)が認知症に備えた財産管理の対策について解説いたします。
■認知症になったら自分の財産はどうなるの?
筆者は、日本全国で年間100件を超えるセミナーを毎年開催していますが、20代の若い方からも老後の年金に対する不安を耳にする機会が増えました。実際に、新婚夫婦向けセミナーのアンケートなどでも、住宅や教育より老後の費用に興味があると回答を頂くことが珍しくありません。
もちろん、老後に向けてしっかり資産を形成していくことは大事ですが、追加でいくつか意識しておくべきことがあります。それは、「一生涯に渡って、その資産をしっかり使えるのか?」という点です。というのも、老後に向けてしっかり資産形成ができるのと、その資産をご自身が必要なタイミングで使えるかは別物だからです。
銀行預金は、原則として本人以外は引き出すことができず、また解約手続きをすることもできません。しかし、本人であったとしても引き出すことができないケースもあります。それは、認知症などで意思判断能力が欠けている状態にある場合です。具体的には、以下のような場面が想定されます。
たとえば、認知症を発症後に介護施設や老人ホームに入ろうとした場合です。預金を引き出せないとなると、介護施設費用をどこから捻出すれば良いか困ってしまいますよね。なかには、住宅を売却して入所資金にすることを想定している方も珍しくありませんが、銀行預金と同様に、住宅も所有者本人しか売却できません。よって、意思判断能力が欠けている状態の場合、本人であっても自宅を売却することができなくなってしまいますのでご注意ください。
つまり、認知症になってしまうと凍結状態になってしまうため、ご自身の財産であっても使うことができなくなってしまうのです。
このような状況を回避するために、「成年後見制度」という制度が存在します。これには、認知症を発症した方が利用する「法定後見制度」と、意思判断能力があるうちに将来に向けて後見人を決めておく「任意後見制度」の2つがあります。後見人については、次で詳しくみていきたいと思います。
■後見人はどんなことをしてくれるの?
後見人の主な業務は、大きく分けて「財産管理」と「身上監護」の2種類があります。
【財産管理】
・金融機関での手続き
・通帳や印鑑の管理
・不動産(自宅や収益用不動産)などの管理
・収支状況の管理
・遺産分割協議への参加
後見人は、被後見人(すなわち、認知症を発症した本人ですね)に代わって、預金の引き出しや銀行口座の解約などの財産管理を行ってくれます。被後見人が複数の銀行口座を保有していた場合、口座を1つにまとめることや、現金払いから口座引き落としへの変更手続きをしてもらうことも可能です。
また、認知症ということで、被後見人が悪質な訪問販売などの被害に遭う恐れもありますよね。後見人には、そういった契約そのものを解除することができる“取消権”という権利もあり、クーリングオフの期間などに縛られることなく行使することが可能です。つまり、もしご自身が認知症を発症し、訪問販売などで高額な商品を買ってしまった場合であっても、後見人の取消権によりそういった被害から守ってもらえるということです。※取消権は法定後見人のみで、任意後見人は対象外となります。
【身上監護】
・病院の入院の手続きや医療費の支払い
・介護サービスの手続きやその支払い
・介護施設への入所手続きやその支払い
・生活品の手配や公共料金の支払い
・住居の確保(固定資産税の支払いや家賃の支払い)
身上監護では、病院や介護施設へ入る場合の手続きやその支払いなどが代表例として挙げられます。実際に介護サービスを受ける場合には、介護保険の手続きなども含まれます。また、介護施設に入所したとしても、家賃や自宅の固定資産税の支払いなどをしておくことで、将来的に被後見人が戻る家を残しておくことも重要な後見人の業務となります。
ちなみに、医療行為の判断(手術を受けるか否か等)や、直接的な医療行為や介護行為をすることは、後見人の範囲外となるため行ってはくれません。とはいえ、車椅子を押したりすることすら禁じられているということではなく、後見人はあくまでも病院や介護施設に対して手続きやその支払いをするということが主たる業務であるため、実務は医療や介護を専門とする方が行うことになるというわけです。
なお、仮に被後見人が介護施設に入ることになった場合に、「身元保証人(身元引受人)」になることも後見人の範囲外となります。つまり、後見人は「連帯債務者」にはならないということです。よって、介護施設などから「身元保証人」を求められた場合は、後見人ではなく被後見人の親族などが対応することになります。
万が一、被後見人に頼れる親族がいない場合は、後見人に「身元保証人」なしで入所ができるように施設と交渉してもらうか、「身元保証人」なしでも入所することができる施設を探してもらうことになります。
いかがでしたでしょうか?認知症を発症すると、症状によっては計算力や判断能力が低下し、財産やお金の管理をすることが非常に困難になります。そう思うと、意思判断能力がしっかりしているうちに対策を考えておくことが大切ですね。
ブロードマインド株式会社
執筆者:平原 直樹
財産形成や退職金運用といったお金の殖やし方を多くの方に伝えるべく、日本全国で年間100件を超えるセミナーを開催。最近では、高齢者の財産管理手法として、家族信託を広めるべく活動中。

■保有資格
・IFA(証券外務員一種)
・TLC(生命保険協会認定FP)
・2級FP技能士
・家族信託コーディネーター
・旅行業務取扱主任者

■得意分野
資産運用、ライフプラン、保険全般、住宅ローン、相続、家族信託

■実績
マネーセミナー:年間100回以上開催
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